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友部正人コンサート at トンネル山にわかギャラリー/札幌

2003年8月1日
今年の友部さんの札幌ライブの会場は、とってもとっても不思議な場所だった。





仕事が終わったのが午後7時過ぎ。
大急ぎで地下鉄に乗り円山公園駅まで。
円山公園駅から会場となる小別沢トンネル付近までは路線バスで行く予定だったけれど、とても間に合いそうに無いのでタクシーに乗り込む。


「小別沢トンネルを抜けて古いトンネルの西区側入り口まで!」と今回のライブのチラシに書いてあったとおりに伝えると、運転手さんは困惑した表情で

「トンネルを抜けて古いトンネル・・・?あんな所で、何かあるんですか?」と。

「今日、コンサートがあるんです!」と私。

「あんなところにコンサートなんか出来る場所があるんですか?」

「ある・・・みたいです(←自分も初めて行く場所なのでちょっと不安。チラシを見て再確認)。
とにかくトンネルまでお願いします。」


不安そうな運転手さんに無理矢理お願いして向かうは小別沢トンネル。
運転手さんの不安そうな表情の理由は5分後に分かった。
洒落た円山の街並を抜け、動物園の前を過ぎると周辺は一気に山奥の景色。
曲がりくねった道。
窓から見えるのは木々と、そして闇。

・・・・ちょっと怖い;


でもほんの10分ほどでトンネルに着く。
そしてトンネルを抜けると、大きな友部さんのポスターを持ったお兄さんが立っていて、会場となる場所を指差していた。「これです!!」
タクシーを急停車させ、運転手さんにお礼を行って、案内のお兄さんに教えて貰ったとおりまっすぐ坂道を駆け上る。
着いたのは開演時刻を5分ほど過ぎた頃。
受付で、10分押しの予定と聞いてホッとした。


中に入ると、昔の農家のような広い建物。
白い壁が裸電球の灯かりに照らされていて、初めて来るのに懐かしい雰囲気の素敵なスペース。
壁には何枚かの絵が飾られていて、窓辺と、そしてステージになるらしい場所の後ろには、やはり懐かしい表情の手作りのお人形が置かれていた。


開演時刻の7時半を10分少々過ぎた頃、主催者の永田さんが出てきて御挨拶。
永田さんからの紹介で、友部正人さんが登場した。


ステージとなる場所に立つと、ギターを手にして軽くチューニング。
そして、ストロークで奏でる。
初めは音合わせのような軽い響きで鳴らされていたのが、徐々に強くなってゆく。
力強いギターの響きで唄い出された第一声は


「ぼくたちはどこへでも流れつく・・・」


この日のポスターにその一節が書かれていた「月の光」!
主催者へのプレゼントのようなこの曲で、札幌では久し振りになる完全なソロでの友部さんライブはスタートした。


最初のMCはこの日のライブのこと。
主催の永田さん御夫妻のことなどを紹介してから、その自分の言葉に「なんか結婚式みたいですね」と笑う友部さん。
ここではヤギを飼っていて、そのヤギの柵の突き当たりがどこまであるかを歩いて確かめに行ったら“行くって決めたから勇気を出して行ってみたら、勇気を出したことを後悔するくらい遠かった”なんてことも話してくれて、みんな大笑い(友部さん、話す言葉も全部、詩を朗読してるみたいだ~!!)。
とってもなごやかな雰囲気。


「勇気の無い放浪者の唄です」とのMCで2曲目は「放浪者」。
その「放浪者」を唄い終えた後、後ろを振りかえって人形を見つめながら

「今日は、なんか一人、後ろにダンサーがついているんですけど・・・」

ダンサーだったのか!(笑)

「次の曲で、踊ってくれるといいんですけど」のMCに、次の曲は「私の踊り子」かな?と思ったら「早いぞ早いぞ」だった。
この早さで踊ったら怖いぞ(笑)。
力強い歌声と力強いギター。
全身で唄うような友部さんの世界だ。


次の曲では一転して、ワルツのリズムでやわらかな音でギターを奏でる。
「風は長い着物を着て 朝の通りを目覚めさせる 僕は朝と手をつなぎ 夜まで眠ることにした・・・」 
曲の後のMCで「チーズを作ってる永田家には、合う唄かなーって思って」と、優しい笑顔で言っていた。
ここではヤギのミルクでチーズを作っているらしい。
今日のライブのサブタイトルは“パン窯1周年記念ライブ”だったから、きっとパンもここで焼いているんだろうな。
そんな建物の中で、裸電球の灯かりの下で、1曲1曲大切に唄う友部さんのライブを見られることに、じわーっと感動が込み上げてくる。


「次の曲はここの家庭とは関係ない唄です。“愛について”」
ってMCには爆笑が起きたけれど、でも唄われた「愛について」で静まり返る。
母と子の唄・・・友部さんの言葉は、唄の世界を目の前に表現する。
唄を聴いているのに、映像を見ているような感覚になるときがある。
この唄も、そんな唄の中のひとつ。


「今日のライブは、みんな飲みながら(聞く)かなーと思ったら、そうじゃないので、早く終わります」ってMCで笑わせてから、ちょっと間を置いて

「僕の唄は時間が経ってしまう。
時間が経たないような唄が作れたらいいのに、って思う」

というような話もしてくれて、その言葉がまるで詩の朗読のように感じられる。
さっきも思ったけれど、友部さんの発する言葉は、MCも、そしていろんな連載やHPのお手紙も、全て詩のように思える。
やっぱり言葉の森の人だぁ・・・誰かとのジョイントでの和やかな友部さんライブもいいけれど、久し振りに完全なソロでの友部さんのライブを見て、その独特の世界に魅了される。


ライブ中盤から後半にかけては、メモするのも忘れて聞き入っていたので記憶頼りの感想文になってしまうけれど(ここまでもほとんどそうなのだけれど・・・;)「ボロ船で」の“絶唱”と表現してもいいくらいの歌には圧倒された。

「眠り姫」を歌った後には、この唄が生まれたニューヨークのことと、今北海道新聞で連載中のエッセイのことを話してくれた。

「公園のD51」には、もう、やられたの一言。
厳しい唄。
むきだしの言葉、っていう表現が友部さんの世界を評する時によく使われるけれど、まさにそういう唄だ。
でも、力強い。
ネガティヴじゃない。
伝えたいことを持った歌・・・

そんな「公園のD51」に続けて、MCを挟まず唄い出されたのは

「君の街に行くたびに 君に会いたいと思ったよ 昨夜初めて知ったんだ 君がもういないって」

・・・ぴーんと張り詰めた空気の中、友部さんは叫ぶように唄う。
痛々しいくらいにまっすぐな唄。



でも・・・鋭い言葉の数々を叫ぶように唄う中、その友部さんの口めがけて飛んでくる蚊が・・・(汗)


今回のライブの途中、蚊が友部さん周辺にばかり集まってしまって、友部さんもむせながら苦笑い。
途中、たくさんの蚊取り線香を友部さんの足元に並べたり、ユミさんが虫よけスプレー(かな?多分そうだと思います。ハッカのニオイが凄いね、って友部さん笑ってました)をかけたりして、ライブ後半は少しは減ったみたいだけど、友部さん、大変そうでした;


詩の朗読を3篇続けて(最新詩集2冊からそれぞれ1篇ずつと、現代詩手帳から1篇。札幌をテーマにした詩も朗読してくれて、とても嬉しかったです)、少し長めのMC。
やっぱり出ました蚊の話(笑)。
「人間には耳があるから言えばわかるけれど、蚊はきっと耳が無いから、口の中に飛び込んで初めて自分のしたことに気付くんだね」ってMCで大笑い。
友部さんも笑っていた。
普通なら、主催の人が慌ててしまいそうなこの状況も、友部さんの優しさとユーモアが、空気をなごやかなものに変えてしまう。


再びギターを手にして唄われたのは「私の踊り子」。
ついついさっき話題になった後ろの踊り子人形に目が行ってしまったのは私だけではなかったと思う。
唄い終えてのMCでは友部さんも彼女を見て

「きっとみんなが帰った後、彼女は踊っているでしょう・・・トンネルで」

怖いです!!(爆笑)


大笑いした後は、一転して
「僕は君を探しに来たんだ」


ハープが、歌声と同じくらいに力強く唄っていた。
唄もギターもハープも一体となっていた。


そして、続けて
「誰もぼくの絵を描けないだろう」


・・・すみません、表現出来ません。
泣きそうでした。
ライブで聴いたのは初めてじゃないだろうか・・・
強烈に鋭い言葉の数々。
けれど、そこには何一つ嘘が無い。
だから、信じられる。
だから、友部さんの唄と出会えたことが、こんなにも嬉しい。



最後は、9月に発売される2枚組ライブCDのことを話してくれて、そのライブの為に作った唄を唄ってくれた。
勿論、はじめて聴く。
けれど、簡単な唄なので一緒に唄って下さいとの言葉に、一緒に唄っていた。
鎌倉でのライブには行けなかったけれど、でもこうして自分の暮らす街で友部さんの唄を聴ける。
友部さんは唄いに来てくれる。
友部さんを呼ぶ人がいてくれる。
それがまた嬉しい。


盛り上がった雰囲気に、じゃあもうひとつ、バカらしい唄で終わりましょう、と言って、もう1曲歌って友部さんはステージを降りた。
ギターを置いた友部さんを見てビックリした。
シャツが、ギターの形の汗でぴったりと肌にくっついていた。



アンコールの拍手に、Tシャツに着替えて戻ってきた友部さんが唄い出したのは「大道芸人」だった。
これも、ライブでは初めて聴いた唄だった。
聴きたい聴きたいとずっと思っていた唄だったので嬉しかった!
もう1曲歌って(すみません、曲名分かりませんでした;)本当にステージを去りかけた友部さんに「お願い、もう1曲!!」って声が飛ぶ。
「遠来か一本道!」というお客さんからのリクエストに、他のお客さん達に「皆さんはどうですか?もう1曲いいですか?」って問いかける友部さん。
勿論、賛同の大きな拍手。
「じゃあ、短い方を」って言って、ギターを合わせながら
「一本道をやると、今までの苦労がなんだったんだ、ってことになっちゃうんで・・・じゃあ最初からこれ1曲で良かったじゃないか、ってことになるので、最近はあまりやってなかったんですが、久し振りに唄います」
と、「一本道」を唄ってくれた。
そんなMCの後に聴いた「一本道」は、やはり、名曲だった。
勿論、これ1曲で良かったなんて思わない。他にも名曲はたくさんある。
友部さんの全ての唄をリアルタイムで聴いてきたわけではない私にとっては、この唄も、いくつもの好きな唄の中のひとつ。
でも、この唄が特別という人がたくさんいるのも分かる気がした。



終わってから時計を見てビックリした。
時計は午後10時を少しまわっていた。
2時間以上のライブだったんだ・・・
でも、時間を忘れていた。
時間は、止まらない。でも、友部さんの唄は、時間を忘れさせる。
会場に駆けつけた時に残っていた仕事の疲れは消えていて、ライブを見られて良かった、という満足感だけがあった。


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[ 2003/08/03 ] ライブ感想文 | TB(0) | CM(0)

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