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友部正人×板橋文夫 ライブ at くう/札幌

2002年7月14日 札幌 Live&Bar くう
毎年恒例の友部正人さんの北海道ツアー
今回は、ジャズピアニストの板橋文夫さんとのライブ




会場からの案内・注意等の後、ピアニカを手に登場したのは、板橋文夫さんだった。


え?何故ピアニカ?ジャズピアニストじゃぁ・・・


板橋さんについての予備知識等を全く仕入れていなかったので少々面食らってしまった。
でも、演奏が始まると、面食らうのを通り越してひっくり返りそうになった。


何なんだ、この世界は!!


今、あの時の衝撃を思い返してみても、それを文章にする術が無いのが歯痒くてならない。
けれど文章になんか出来ない程、とんでもなく凄いものを見られた、という奇妙な優越感のようなものもしっかりと心に残っている。
「凄い」を連発するのは最もヘタな文章の書き方だと以前どこかで聞いた気がするし自分でもそう思うけれど、「凄い」以外の言葉が思い浮かばない。
荒っぽいとさえ感じられるプレイと、叙情的(官能的)な切ないプレイ。
美しいメロディと、前衛的で別世界にトリップしそうになる狂気的な演奏。
1曲目は、ピアニカをピアノの上に乗せて、ピアニカでメロディを奏でながら、左手でピアノを弾くというスタイルで、即興っぽい(?)曲を。
そして2曲目は、鉄の皿(灰皿か?)をピアノの弦の上に乗せ、鍵盤を叩く度にその皿がはねてカチャカチャと音を立てるその音をパーカッションの代わりにしながら、いくつもの曲が融合した長い組曲のような曲を。
美しいメロディを奏でる時はメロディを鼻歌でうたう板橋さんの声がピアノの音に混じって聴こえてきた。
鼻歌を歌いながら演奏するピアニストというと、個人的にはグレン・グールドが真っ先に思い浮かぶのだけれど、板橋さんのそれはグールドのような鼻歌ではなく、どちらかというと、うなり声にも聴こえる。
そして3曲目はまたピアニカを使ってラグタイム風の曲。
そして、最後は大作。
狂気と繊細さとを併せ持った、壮大な曲。


圧倒されているうちに、あっという間に30分。
板橋文夫さんのソロコーナーは4曲のみで終了。


入れ替わりで、休憩を挟まず友部正人さんが登場。


・・・そうだ、今日は友部さんのライブを見にきたんだ・・・


大袈裟な話でも作り話でもなく、真面目な話、友部さんが登場するまで、心から、友部さんが消えていた。
つい30分前までは、友部さんのソロライブを見るのと変わらない気持ちでいたというのに。


板橋さんと入れ替わりで登場した友部さんは、先日の神戸のライブ(春一番コンサートの前日に見ることが出来たライブ)の時と同じ、赤地に黄色のハートのプリントのシャツを着ていた。
まずは詩の朗読。
お客さんにも朗読に参加させて、「アメリカのにおいのしないところへ」。
友部さんの後について、友部さんの言葉と逆のことを言うのだが、実際に声に出して朗読に参加しているうちに、その詩の意図することが身体の中にまで入ってくるような、妙な気分になった。
そして、朗読に続いては「なぜか札幌に来るといつも唄いたくなる曲で・・・それは多分、この曲が出来て、初めて唄ったのが札幌だったからのような気がします」とのMCで「ある日ぼくらはおいしそうなおかしを見つけた」を。
そういえば、去年の札幌ライブの時にもこの曲を唄っていた。
2曲目は、私にとっては初めて聴く曲だった(すみません、まだアルバムを全部持っている訳ではないので・・・)。
「暗くなった罰として/夜を牢屋に閉じ込めた」というフレーズから始まり、次々と美しいものが鉄格子の中に閉じ込められて行く。
明るいギターの音が力強いストロークを奏でているというのに、言葉がとても痛い。
それは、次に唄われた「働く人」も同様。
友部さんの唄は、ギターがシンプルな分、言葉が音に乗った詞(歌詞)ではなく言葉そのままで伝わってくるものが多い気がする。


「眠り姫」で友部さんのソロ・コーナーは終了。
MCは、最初の詩の朗読とその後の「ある日ぼくらは~」の時以外は、「ありがとう」と曲名を言うくらいで淡々と進んだので、あっけないような印象すらあった。
ここで休憩が挟まれ、第2部は、いよいよこの友部正人さんとさっきの板橋文夫さんとのジョイントライブ。
どうなるんだろう・・・


この日は恐ろしい程の数の観客が入っていてトイレも行列だったせいか、休憩が若干押しての第2部スタート。
2人揃ってステージへ。


友部さんは、さっきのソロの時よりもリラックスした表情。
正面を向いてばかりいたのが、反対側を向いて「たまにはこっち見ましょうか」と笑顔を見せてくれたりもする。
和やかな雰囲気の中、
1曲目は
「夜は言葉」。


・・・・・・やられた。


板橋さん、プロだ。
ギターの静かなアルペジオに、美しいピアノの音色が寄りそう。
シンプルな友部さんのギターの上を、自由自在に、けれど曲のイメージを損なう事無く美しいフレーズを奏でる板橋さん。


続いては、MCを挟まず友部さんが力強いストロークを奏で、板橋さんのピアノはジャジーに激しく叩きつけるように。
これ、何の曲?と思った瞬間、友部さんのヴォーカル。


「月の光」だった。


すっげ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!


もう、表現の仕様が無い・・・
板橋さんの音が、友部さんのうたを生まれ変わらせている。
新しいうたが生まれている。


いつの間にか、板橋さんはメガネもふっ飛ばしていた。
友部さんも汗だくになりながらギターをかきならしてた。
でも、唄い終えると笑顔。
「なんか、途中で別の曲を唄いたくなるような曲でした」なんて言いながら、板橋さんと笑みを交わし、言葉を交わす。


次の曲も私にとっては初めて聴く曲だった。
「♪僕には愛が2つのゴムまりになったように映ってる/
 愛について考えることで2人は結ばれている」
そんなフレーズが深く心に残った。
板橋さんは、またピアニカを吹きながらピアノを奏で、友部さんは優しい音で4拍子のリズムを刻む。


そしてまたMCを一切挟まずストロークとジャジーなピアノ。
シャッフル調のリズム。
これも、何の曲だか分からなかった。
が、唄が始まって「これ?!」ってぶっとんだ。
「38万キロ」だった。
考えてみたら原曲も確かにジャズっぽい。
でも、この曲がこんなにカッコ良くてこんなにスリリングな曲だったとは気づかずにいた。


ここで、ちょっと長めのMC。
今回のライブのいきさつが、お2人の口から語られる。
というか、友部さんがきちんと話す横で、板橋さんがごにょごにょと限りなく一人言に近い突っ込みを入れるという感じ(笑)。
ちなみに今回のライブは、東川町でのライブを主催なさった方がこのお2人の組み合わせでのツアーを、というのを考えられたとの事。
それで、東川だけでなく、全道各地での友部さんのライブも今回は全て板橋さんとのジョイントという形になったとのこと。
でも、お2人が一緒にステージに立つのはこれが初めてではなく、以前にも2回ほど一緒にライブをなさったことはあるのだという。
「でも一緒にツアーは初めて」と板橋さん。
「大変で・・・(ごにょごにょ)でも今日はピアノはいいし、お店もいいし、・・・・・・・(更に、なにやらごにょごにょ)・・・頑張れ!」一体誰に向かって言っていたのかは不明(笑)。


リラックスしたトークの後は、ワルツのリズムに乗せてゆったりと語る「私の踊り子」。
しっとり聴かせたその後のMCで、何故か突然板橋さんが
「みんな聞いてくださいよ。友部君は毎日マラソンしてるんですよ。
僕より体力あるんですよ。」と喋り出して場内爆笑。
壊れかかった板橋さんをなだめながら、次の曲が「壊れてしまった1日」というのはあまりにタイミングが良過ぎて笑ってしまう。
けれどその曲に、その演奏に、唄に、引き込まれる。
ピアノとピアニカが入ることで壮大な曲に生まれ変わったこの日の「壊れてしまった1日」で、この曲も自分の中での“特に好きな曲”の仲間入りをした気がする。


「君はこんな言い方嫌かもしれないけど」では力強いストロークに負けじと(?)板橋さんがドラムのスティックでピアノの上に置いたタイコを叩く。
最初はピアノにも傷がつくんじゃないかとハラハラしながら聞いていたけれど、でもその音の迫力と、ギターとピアノの掛け合いの世界に引き込まれてしまう。
互いにソロをとりながら(とらせながら?)、違いの名前を絶叫に近いくらいの声で叫びながらの演奏。


こんな友部さんは、初めて見た。


今まで“ことばの人”(私の個人的な解釈で、職業としての詩人、という意味だけでなく、もっと広い意味でなのだけれど・・・)の印象を持っていた友部さんを、この日のライブで“ミュージシャン”と強く感じるようになった。


最後の曲は、2人でアカペラで(!)「夕日は昇る」。
最初は完全なアカペラ。
そして、途中からはギターとピアノを静かに奏でながら。
繰り返される「今度君にいつ会える」というフレーズが、観客に対してだけでなく、ステージ上の2人のお互いに対する思いだったようにも感じられたのは、私だけではなかったと思う。


アンコールではセッション的に2曲演奏。
そのうちの1曲、とても美しいバラードは、板橋さんの「For You」という曲だったと後で知った。
板橋さんのメロディを、友部さんが言葉じゃなく歌で一緒に奏でていた。
言葉以上に、思いが伝わってきた気がした。


ライブの流れもきっちり考えられた、完成されたライブ。だったんだと思う。
けれど、
その一方で、
完成、なんてものを追求したライブではなく、その日、その場の空気によって生み出された、その場にいた者しか体験できなかったとんでもない貴重なライブだった、という気がする。
いつもライブの感想文を書く時には、「私の拙い文章なんかでは、あのライブの感動はとても語り尽くせない」と思いながらも、ある程度の雰囲気くらいは伝わるものになっているのでは、という自負(思い上がり?)があった気がするけれど(反省してます;)、こうしてライブを振り返ってみて、今回は「こんな文章ではあの凄さはまったく表現出来ていない」と思わずにはいられない。
こんなもんじゃない。
あの日あの場所にいた人なら、誰もがそう思うだろう。


なんだか、凄いものを体験してしまったのかもしれない。

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[ 2002/08/05 ] ライブ感想文 | TB(0) | CM(0)

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